2018年6月から医療広告規制が適用!今後のホームページ制作の注意点について
エムハンド医院運営
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歯科関係者であればご存知の方も多い「医療広告ガイドライン」。
この医療広告ガイドラインが2017年6月、厚生労働省によって大幅に改正され、2018年6月1日(予定)からすべての医療機関のホームページが「広告」とみなされるようになります。
これまで医療関係では「CMやチラシ、看板など」に限定して広告規制が適用されていましたが、今回の改正によってホームページも広告に分類され、長らく“グレーゾーン”であった医療機関のホームページが規制対象となったのです。
6月から施行される新しいガイドラインでは、もし、ホームページの内容が規制に違反した場合、「30万円以下の罰金もしくは6月以下の懲役」が科されることとなります。
では、今後はホームページ内のどのような記述が法に触れることとなるのでしょうか?
いろいろと不安を抱かれる方も多いかと思います。
そこで今回は、2018年6月から施行される予定の「ホームページ上での医療広告規制」についてご説明します。
○厚生労働省が今回の改正に踏み切った理由
今回、改正案に初めてホームページの広告規制が盛り込まれた理由には、美容業界における整形手術や脂肪吸引で患者と医療機関とのあいだにトラブルが多発したことが背景にあります。
ホームページで説明されていた内容と実際の施術が異なったり、ホームページで提示されている症例写真と治療結果が異なるなど、「認識の行き違い」が生じるケースが非常に多いのです。
このような事態を受けて厚生労働省もとうとう重い腰を上げ、本格的な法改正に乗り出すこととなりました。
○法改正で変わったこと
今回の法改正の目玉である「医療に関する広告規制の見直し」。
公布された新法律では、以下の2つの方針が定められました。
【美容医療サービスにかかわるホームページおよび事前説明・同意に関する建議 (消費者委員会 平成27年7月)】
1.医療機関のホームページを医療法上の「広告」に含めて規制の対象とすること。 2.(1を行うことができない場合)少なくとも医療法に基づき禁止している虚偽広告や誇大広告等については、医療機関のホームページについても禁止すること。 (厚生労働省「医療法等の一部を改正する法律の概要(医療に関する広告規制の見直し)」より抜粋) |
これにより、今後医療機関のホームページには「医師の名前・診療科目・提供される診察、治療の内容」など、非常に限られた情報しか掲載できなくなります。ただし、このような広告規制は「患者が知りたい情報を詳細にわかりやすく提供する」というホームページ本来の魅力を損なうおそれがあるため、現在、経過措置期間を設けて広告可能な事項の限定を部分的に解除することが議論されています。
○規制の対象となる表現「絶対に記載してはいけない項目」
では、具体的にどのような表現がNG項目になるのでしょうか。
今回の法律施行後、特に気をつけなければならないのは、
≪虚偽の情報≫
≪著しい誇大表現≫
≪薬機法違反≫
の3つです。
ただし、これら3項目は医療法ではなく景品表示法および薬機法に該当するため、現行のホームページでも違反にあたるという点に注意しなくてはいけません。
もし、上記の3点について広告表現に違反があった場合、行政指導や是正命令といった手順を経ずにいきなり刑事罰が適用される可能性があります。
▲記載してはいけない項目
≪虚偽≫
・例1.修正や加工を施した術前術後画像・イラストの掲載
効果を強調する目的で修正や加工をした術前術後写真やイラストなど。虚偽や誇大表現となります。
・例2.「1日ですべての処置・治療が終了します」(術後に定期的なケアが必要な場合)
歯科医院であればワンデイインプラントにおける「1日で全部の歯が入ります」など、術後に定期的なケアが必要であるにもかかわらず、「すべてが1日で終わる」と誤解をまねく表現は規制の対象になります。
・例3.「当院の手術であれば絶対的な安全を保障します」「どんなに難しい症状でも必ず成功させます」
絶対に成功する手術を行うのは医学的に難しいため、虚偽にあたります。
・例4.「治療を受けた患者さんから○○%の満足度を得ています」(データの根拠や調査報告の提示がない)
データの根拠を明確にせず、結果と考えられるものだけを表現するのは虚偽とみなされます。
また、調査対象が非常に少なく限られた人数だったり、「アンケートのお礼」など、謝礼を支払って得た調査結果も誘導とみなされ虚偽となります。
・例5.研究実態のない施設の表記
医療法第42条の規定により、研究の実態がない施設の表記は虚偽とみなされます。
≪著しい誇大表現≫
①他者や他院との比較で優位性を示そうとするもの
・例1.「芸能人や有名スポーツ選手が当院で治療を受けています」「著名人も当院の医師を推薦しています」
芸能人やスポーツ選手が受診している旨の表現。事実であったとしてもほかの医療機関より優れていると誤認させやすく、誇大表現となります。
・例2.「当院の在籍医師数は県内ナンバー1を誇ります」「○○治療の分野ではトップクラスの実績があります」
自身の医療機関がほかよりも優位であると誤認させやすく、誇大表現となります。
②記述内容が誇大だったり、医療機関にとって都合の良い過大な強調表現
・例1.医療機関に都合が良い体験談のみを掲載
意図的に選んだ体験談のみを掲載したり、謝礼によって誘導した感想の記載は過度な強調になります。
・例2.「当院は知事の許可を取得しています」
医療機関が各都道府県知事の許可を得ることは当然であるのに、あたかも特別な許可を得たような表現をするのは誇大表現となります。
・例3.「医師の在籍数は○名」(意図的に古い情報を記述)
実際の在籍数と異なる古い情報を掲載するのは医療機関にとって都合の良い過度な強調とみなされます。
・例4.「○○学会の認定医です」「○○協会認可施設」(活動実績が確認できない団体の記述)
公正であり実績が客観的に確認できる団体によるもの以外の記述。
たとえば歯科医師であれば「口腔外科指導医」「歯周病専門医」などの記載は可能ですが、医院の関係者自身が運営している団体や活動実績がない団体による資格・施設認定は広告規制の対象となります。
・例5.「○○センター」(医療機関の名称または名称に併記しての記載)
特定の医療を行う機関や都道府県が認定する機関以外の「インプラントセンター」「入れ歯センター」などの記載は誇大表現とみなされます。
ただし、上記については「小児歯科センター」など、患者向けに表記したものを院内に提示することは可能です。
・例6.「無料カウンセリングを受けた方に○○をプレゼント」
提供する医療サービスと関係があるため、規制の対象になります。
③受診をせかす表現、または過度に費用を強調
・例1.「現在キャンペーン実施中」「今なら期間限定で○○ケアが50%オフ!」「○○オプションが10万円→5万円」「大サービス!○○療法お得プラン」、「施術1箇所○○○○円!」など
早急な受診をあおる表現や医療サービスの費用を過度に強調するのは規制対象にあたります。
④科学的根拠にとぼしく患者の不安を必要以上にあおるもの、受診や特定の治療・手術などに不当に誘導する表現
・例1.「この症状がでている人の2人に1人は○○のおそれがあります」「上記のような症状がでているときには命にかかわる危険性がありますのでただちに診察を受けてください」
特定の症状や病気についてリスクを過大に強調したり、医療機関での受診を早急にせかす表現は規制対象となります。
・例2.「○○治療は効果が高くオススメです」
特定の手術や治療法の効果を強調し、治療を受けるように誘導するのは規制対象にあたります。
・例3.「○○治療は効果がでにくくリスクも大きいので最新の○○治療をオススメします」
特定の手術や療法の効果を強調し、それ以外の治療や手術を受けるように誘導するのは規制の対象となります。
≪薬機法、健康増進法、景品法、不正競争防止法に違反した記述≫
・例1.未承認の医薬品や治療法の広告の記載
厚生労働省の未承認の医薬品や治療法の広告、また、認証されていない使用法を表記することは薬機法違反に該当します。
・例2.「特定の病気や症状の回復」を連想させる画像やイラスト
「治療を受ければ回復が保証される」ような印象を与えるものは景品法違反となります。
○今後ホームページ制作の際に注意しなければいけないこと
▲法律違反をおかしていないかどうかの確認が必須
上記でお伝えしたように、今後ホームページを制作する際には「虚偽」「著しい誇大表現」「薬機法を始めとする各法律に違反した記述」に特に注意する必要があります。
サイト内の文章はもちろんのこと、ホームページ内の画像やイラストも規制の対象となるため、今以上に確認をしっかり行わなければいけません。
○経過措置期間に、医療広告ガイドラインへの対応準備を
▲「医療広告ガイドライン」の内容をしっかり把握しておくことが大切
これまで医療機関のホームページは「医療機関ホームページガイドライン」による一定のルールがありましたが、罰則は存在していませんでした。
しかし、今回の改正でホームページが広告とみなされるようになったため、2018年6月1日(予定)からは「医療広告ガイドライン」に則ったホームページ作りが求められることになります。
具体的には、「医師の名前」「診療科目」「治療内容」「治療費用」など、あくまでもその医院の基本的な情報のみをわかりやすく記載することが大切です。
なお、歯科医療の分野では「レーザー治療」や「3mix法」「インビザライン」なども規制の対象となるおそれがあるものの、経過措置期間が設けられているため、現段階ではこれらの治療法のホームページへの記載は即法律違反、とはならないようです。
▲自由診療を行っている歯科医院が記載すべき内容について
保険診療とは異なり、自由診療は費用に大きな金額の幅があるほか治療法も多いため、ホームページ作りの際には法律違反をおかしていないかどうかを特に気をつける必要があります。
自由診療を行っているクリニックのホームページ作りについては、「医療広告ガイドライン」に加え、詳細な記述の仕方が示されている厚生労働省の「医療機関ホームページガイドライン」を参照することをオススメします。
ガイドラインでは、
・一般的に必要とされる治療の内容、治療にかかる平均的な費用・期間・治療回数を明確に掲載し、ホームページを見た国民や患者にわかりやすく伝えるようにすること。
(平均の費用が明らかでない場合には通常必要となる最低限の金額から最高水準の金額まで範囲をはっきり示すなど、可能なかぎりわかりやすく記載すること)
・治療を受けたことで発生する可能性があるトラブルや副作用など、治療のリスクについてもわかりやすく国民や患者に伝えること。
・記述を行う際も文字を小さくしたりリンク先に掲載せず、ホームページを見たときにわかりやすい方法で記載すること。
とされています。
【エムハンドの今後の対応】
エムハンドでは、今回改正された「医療法」「医療広告ガイドライン」および「医療機関ホームページガイドライン」を守り、これから施行される新法律に則したホームページ作りを続けてまいります。
また、現段階では規制対象となる事象がいまだ議論中であり、今後規制がさらに厳しくなるか緩和されるかは確定していない状況です。
もし、当社が管理保守をお引き受けしている歯科医院様のホームページが是正対象となり、自治体の担当者から電話や通知が来たときにはすぐにお知らせください。
できるかぎり迅速に対応をさせていただきます。
状況にもよりますが、指導や是正命令の時点であれば刑事罰をただちに科されることはほぼありません。
早い段階でのご相談、ご協力をお願いいたします。