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安定した売上げのための秘策。一度来た患者を離さない「顧客生涯価値」という考え方

マーケティング

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顧客生涯価値という言葉をご存知でしょうか? 顧客生涯価値とは、一顧客が取引を始めてから終えるまでに、対象企業に対してもたらす利益の総量を指します。すでに獲得した顧客との関係を維持することが長期的にみると安定した企業収益につながるという考え方から、現在のマーケティングでは非常に重視されている考え方です。歯科医院で言えば、新規の患者さんが来た場合、必要な治療を終えた後もその患者さんが生涯、自医院に通って利益をもたらしてくれる仕組みをどれだけ作れているかということです。今回は接点を持った患者さんと一生のお付合いをする–顧客生涯価値–という考え方について解説します。

顧客生涯価値とは?

まずは顧客生涯価値という言葉の意味をもう少し深く解説し、こうした考え方が重視されるようになった背景をご説明します。

顧客生涯価値(customer lifetime value)はLTVと呼ばれるマーケティングの指標で、計算方法は次のようになります。

LTV =(平均取引単価)×(取引頻度)×(収益率)×(取引継続年数)

収益率には顧客獲得時のコストや顧客維持のためのコストも含まれます。

そもそも顧客生涯価値が注目されるのは、「新規に顧客を獲得するには既存顧客の維持費のの5倍ものコストが必要」という事情があります。利益を最大化するためには、既存顧客(特にリピーターやお得意様など)からの売上を重視する方が効率的であり、一顧客のシェアを追求すべきという考えから、それを計測する指標としてLTVが考案されたのです。

LTVを最大化するためには、

  • 平均取引単価を上げる
  • 取引の頻度を上げる
  • 取引にかかるコストを下げる
  • 永続的な顧客になってもらう

という課題をそれぞれクリアする必要があります。

しかし、顧客生涯価値に基づく経営戦略では、一時的な売上増よりも将来にわたっての顧客との永続的な関係を重視することが多いのが特徴です。

歯科医院の顧客生涯価値のシミュレーション

では、顧客生涯価値を歯科医院について考えてみましょう。

ロケーションにもよりますが、歯科医院の場合、地域に根ざした医院が圧倒的に多いと思われます。そのような医院では、子供の頃から通いだし、大人になっても結婚をしても通い続け、ついには自分の子供を連れて通ってくるような患者さんが少なくありません。こうした患者さんと長きに渡ってよい関係を築くには、歯のメンテナンスという商品が欠かせません。

例えば、6歳から76歳まで通った患者Aさんが年3回の歯のメンテナンスをずっと続けた場合、顧客生涯価値はどのくらいになるのでしょうか。

歯のメンテナンスは値段も内容もさまざまですが、効果的な予防をしようと思うなら、保険治療だけでは十分ではなく、自費治療もあわせて5,000円~10,000円程度、平均して7,500円はかかると仮に想定します。ここから、定期的な継続をしてもらうための経費(例えば、11枚つづりの回数券など)を1割と設定し、750円を引いた金額、6,750円を売り上げと仮定して計算してみましょう。実際には、こここら治療にかかる経費や顧客管理の維持費を引くことになりすが、ここでは売上げベースでイメージをつかむことにします。

Aさん 6歳~76歳まで70年通い続ける

(平均取引単価=6,750円)×(取引頻度=3回)×(取引継続年数=70年)=1,417,500

どのように患者との関係性を築くかがカギ

1,417,500円

 
さて、この金額をどう思われるでしょうか。

もちろん、単なる主訴の治療だけではこの金額には及びません。
インプラントの平均価格を40万円としたら、3本行って120万円。なかなか難しそうです。
通常、この金額を超えようと思うと、矯正治療をするか、よほど経済的に余裕がある方が審美歯科治療などを受けるか、かぶせ物を入れ替えるなどのケースが考えられますが、かなりレアなケースだと思います。

確かに、1回6,750円の歯のメンテナンスを年に3回きっちり受けてもらうようにするには、医師側が、患者さんからの絶大な信頼を得る必要があります。

しかし、大人の方にとって年間20,250円の出費は女性ならば美容院代よりも安いくらいです。この金額で一生、痛い思いをせず、自分の歯で美味しく食事ができるならば、少しも高くないことを患者さんに教えてあげられるかが、この関係性を継続させられるかのカギとなってくるのです。もちろん、いくら歯科で定期的にメンテナンスをしても、家庭でのメンテナンスが主体となること、その正しい方法もきちっと患者さんに伝え、実践してもらわなければなりません。

患者さんとの永続的で良好な関係を築くには、こうした患者さんへの啓蒙のほかにも、信頼に応え得る技術力の高さも備える必要があります。例に出した歯のメンテナンスは、歯科衛生士が行いますが、きちんと訓練された人とそうでない人では、メンテナンスの仕上がりに雲泥の差が出てしまい、ひいては患者さんの口腔の健康保持に関わります。歯科医院で歯のメンテナンスをしているのに、虫歯や歯周病になったら患者さんはどう思うでしょうか。たとえそれが、家庭でのメンテナンスの不出来が原因だったとしても、不満の矛先はきっと歯科医院へと向かうことでしょう。

一度つかんだ患者は決して離さないという意思決定

「一度来ていただいた患者さんを決して離さない=生涯顧客にする」という考えをもって、日々患者さんと接しておられる医院はどのくらいあるでしょうか。

これは筆者の体験ですが、今まで10軒近くの歯科医院に通ってきましたが、「通い続けてください」といった意思に触れたのは1回くらいでしょうか。治療終了3カ月後に定期健診を促すハガキが1枚届いたきりです。

既存の患者さんへのアプローチ次第で、安定した売上げをあげ続けることは可能です。患者さんも喜ぶ、歯科医院にも嬉しいWinWinの関係を築く、顧客生涯価値という考え方。自医院にとってどのようなメリットがあるか、ぜひ一度考えてみてください。  

まとめ

  1. 顧客生涯価値とは、一顧客が取引を始めてから終えるまでに、対象企業に対してもたらす利益の総量で、以下の計算式で求められる
    LTV =(平均取引単価)×(取引頻度)×(収益率)×(取引継続年数)
  2. 歯科医院でシミュレーションした場合、一人の患者に生涯にわたって定期的に歯のメンテナンスに通ってもらうことは、どんな高価な治療を施すことを狙うよりも安定した売上げにつながる
  3. 一患者を生涯顧客にするには、医院側の明確なアプローチと技術的な向上への努力が欠かせない。