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歯科医院・歯科医療人として災害に向き合い、やるべきこと 2/2

医院運営

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熊本を中心とする地震により、お亡くなりになられた方々に謹んでお悔やみ申し上げますとともに、被災された方々へ心よりお見舞い申し上げます。

相次ぐ大型の地震に際して、もはやこうした未曾有の大災害が誰にとっても他人事ではないことを私達は理解しました。そして、歯科医院として、歯科医療人として、今日からできることは何かを考えてみたいと思いこのコラムシリーズを始めました。

1回目は「診療中に災害が起きたらどうするか」をテーマに、自分たちが抱えている災害リスクを把握し、自前の災害マニュアル作りに取り組むためのヒントをお伝えしました。

2回目となる今回は、歯科医院として日頃からできる「災害時に患者さんの口腔の健康を保つための啓蒙活動」についてです。

誤嚥性肺炎の被害を知り、防止策を啓蒙

災害の避難生活の中で心身のケアとともに、「誤嚥性肺炎」を防ぐための口腔ケアが非常に重視されていることはすでに周知のことと思います。
1995 年の阪神淡路大震災による死亡者は6,434人ですが、その中で震災後2 カ月以内に死亡した「震災関連死」とされる人々は、全体の14.3%にあたる922 人に及びます。その中の多数を占めるのが「誤嚥性肺炎」にかかった高齢者であるといわれています。そして、その原因が避難生活の中で口腔ケアがおろそかにされた結果、免疫能の低下した高齢者が口腔内細菌を多く含んだ唾液を誤嚥 することによって引き起こされたという事実を私達が知ったのは、震災が収束したずっと後のことでした。

こうした教訓に学び、東日本大震災の際には、震災直後から避難所内において誤嚥性肺炎を防ぐための口腔ケアに関する啓蒙活動や、歯ブラシや洗口液を救援物資として送る動き、歯科医師や歯科衛生士の派遣などが積極的に行われてきました。それでも、季節的なことや水道の復旧が遅れたこともあり、誤嚥性肺炎で亡くなる高齢者は震災前の1.5~2倍に至ったといいます。

そして今回の熊本地震では、「誤嚥性肺炎」防止のための対策や啓蒙活動はメディアやインターネットでも広く採り上げられ、その認識は一般人にまで広がりつつあります。

それでもまだまだ、こうした知識が「身についている」とはいえません。そこで、歯科医院が、不足している実践力を養うための啓蒙活動を担うのがふさわしいのではないかと考えます。

啓蒙イベントで災害時の実践力を鍛える

災害時に自分の口腔の健康を守れるのは自分でしかありません。患者さんには、「誤嚥性肺炎」の怖さやケア方法をお伝えすると共に、「緊急時にどうやって口腔ケアをするか」を体験し、実践方法を身に着けてもらうことを着地点に啓蒙活動をしましょう。
具体的には、あらかじめ歯科医師や歯科医院スタッフが自分たちで実践してその効果を実感できたものを対象にして、体験イベントを開いて直接指導するのがよいでしょう。

また、使ってみて役立つ洗口液やツールなど非常袋に入れておくべきものがあれば、イベントに合わせて販売をするのもよいでしょう。乳幼児の歯に塗っておけるフッ素入りのペーストなど、歯科医院でしか取り扱えないものは患者さんにとっても重宝すると思われます。

知識として定着させる

大災害時には電気や水道が断たれるケースがほとんどです。現代の住宅事情では、この2つが断たれるとたちまち心身の健康を保つことが難しくなります。トイレに不自由し、飲用水が不足するなか、歯磨きに水を使うなんてとんでもないという雰囲気に陥りがちです。しかしこうした時こそ正しい知識で自分や家族の健康を守る術(すべ)を知っておくべきです。たとえ、こうした緊急事態であっても口腔ケアは段階的にできることがたくさんあり、栄養を取るのと同じくらいに優先して取り組むべきことであるということを知ってもらいましょう。

また、スタッフや参加者の中に実際に災害での避難生活を体験した人がいたら、その体言段をシェアも積極的に行いましょう。

誤嚥性肺炎について
(北海道胆振総合振興局HP内のPDFより)

災害時の口腔ケア(歯磨きほか)の体験指導

知識を身につけた後には、必ず実践をします。以下に紹介するものは簡単にできるものばかりですので、順番にやってもらうとよいでしょう。もちろん指導するスタッフはあらかじめ自分たちで体験しておきます。

・何もない時⇒唾液でうがいをする

唾液がよく出るマッサージや舌の運動ををして、自分の唾液をなるべくたくさん出すようにし、唾液を口中の隅々まで行き渡らせる。場合によっては唾液でクチュクチュうがいしても構いません。うがいした後の唾液は吐き出してもいいですし、飲み込んでも問題ありません。これだけでもずいぶん違うはずです。
新鮮な唾液は本来、口腔内を清浄に保つために一番適した水分です。疲れたり緊張状態が続くと唾液の分泌量が減り、口腔内を清潔に保てなくなるので、意識的に唾液を出すだけでも免疫力を保つのに役立ちます。

・歯ブラシがない時⇒ペットボトルのふた1杯でもうがいは可

ペットボトルのふた1杯には約8mlの水が入ります。食後にそれを口に含みクチュクチュうがいをします。吐き出す場所さえ確保できない場合は、ティッシュペーパー3枚を重ねてそこへ出します。
清潔なガーゼ、なければハンカチやティッシュを指に巻きつけたもので歯の汚れをぬぐいます。最後にもう一度うがいをします。

・歯ブラシがある時⇒水30ml(大さじ2杯)あれば歯は磨ける

こちらが避難生活の中ではスタンダードな歯磨き方法となると思います。詳しくは以下のURLを確認してください。

災害時の歯のみがき方
(日本歯科医師会HPのPDFより)

高齢者・要介護者・乳幼児がいる家庭には特に入念な啓蒙を

上記に述べたのは一人で歯磨きができる健常者のケースです。しかし、家族の多くには義歯を使っている高齢者や、介護が必要な障碍者や病人がいたり、乳幼児がいたりします。こうしたケアが必要な人を抱えている場合は、さらに周到な準備が必要です。
必要とするツールを準備し、口腔ケア方法を身につけておく必要がありますので、自分たちだけではなく、地域のスペシャリストへの協力も要請しながら、患者さんやその家族が自力でできる限りの事前準備ができるよう支援しましょう。

高齢者や要介護の方、乳幼児の口腔ケアについて
(財団法人口腔保険協会HPのPDFより)

非常用持ち出し袋に入れるべきもの

ここまで紹介したきたような実践を体験してもらい、最後は各家庭に置いてある非常用持ち出し袋の点検をしましょう。
家族構成によって違う口腔ケア用品がそれぞれ揃っているか、洗口液や義歯の洗浄剤などの品質保証期限は切れていないか。できれば年に一度はこうしたイベントを開催し、その都度ごとにストックしてあるものの期限の点検、入れ替えをするタイミングとしてもらうのもよいでしょう。

《参照記事》

歯科医院・歯科医療人として災害に向き合い、やるべきこと 1/2

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