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患者さんからの「おすすめの電動歯ブラシは?」の質問への上手い回答方法

インバウンド医院運営ブログネタ

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患者さんからお勧めの歯ブラシやデンタルペーストを尋ねられ、医院で推奨しているものを答えることはよくあると思いますが、電動歯ブラシの場合はどうでしょうか。電動歯ブラシは万人向きのツールではありませんし、機種による特徴の差も大きく、院長によっては電動歯ブラシを推奨しない人もいらっしゃると思います。
2013年に行われた「電動歯ブラシ」」に関するアンケート によると、電動歯ブラシの普及率は22.9%で、それ以降数年経って少し増えたと予想して、3割弱の人が電動歯ブラシを使っていることになります。年々増していく電動歯ブラシの影響力を考えると、歯科医院としても何らかの公式見解を持っているほうがよいのではないでしょうか。今回は電動歯ブラシについて考えてみたいと思います。

「口腔内ケアは各自個別のケアプランが必要」という大前提を伝える

歯科医院の現場では患者さんからいろんな質問を受けると思いますが、中でも少し困ってしまうのが電動歯ブラシについての質問ではないでしょうか。

  • 「電動歯ブラシのほうが普通の歯ブラシよりよく磨けるんですか」
  • 「お勧めの電動歯ブラシを教えてください」
  • 「子供の仕上げ磨きに使ってもいいですか」
  • 「介護に使えますか」

などなど……。いろんな考え方があるでしょうが、電動歯ブラシを使ったからといって、無条件に歯ブラシよりきれいに磨ける訳ではありませんし、歯間の汚れが落としきれないのは歯ブラシと同様です。矯正中の方や入れ歯の方など、場合によっては使わないほうがいい場合もあり、「歯やお口の中の状況によってケースバイケースなので、一概には言えないんですよ」と説明するしかありませんが、こうした漠然とした回答は患者さんが聞きたい答えとは違うことが多いのです。患者さんはいいのか悪いのか、どれがお勧めなのか、歯のプロからの白黒はっきりとした答えを欲しがる傾向が強いので、まずは「口腔内ケアは各自個別のケアプランが必要」という大前提をお伝えするところから始めねばなりません。

想像以上に認知されていない電動歯ブラシの正しい使い方

多くの患者さんが正しいブラッシング方法を身につけていないのと同様に、電動歯ブラシの正しい使い方を実践できている人はごくわずかです。
以前、筆者はあるメーカーの電動歯ブラシの新製品をユーザーが自力でどのように使いこなすかというテストを見る機会があったのですが、無作為に選んだ、電動歯ブラシの使用経験者2名を含む被験者5名全員が電動歯ブラシの使い方を間違っていました。主な間違いは以下の通りです。

  • 毛先を歯に当てるだけでいい電動歯ブラシを普通の歯ブラシのように細かく動かして使う。→意味がない、かえってよく磨けない。
  • 毛先の当て方が間違っている。→よく磨けない。
  • 毛先を歯に軽く押し当てればいいところを、かなりの圧をかけて押し付けている。→歯の表面や歯ぐきを傷つけるリスクが高い。
  • 手磨きよりも効率よく磨けることから、(当該機種の場合)3分程度でよい電動歯ブラシの使用時間を、手磨きと同じような感覚で5分以上使う。→歯の表面や歯ぐきを傷つけるリスクが高い。
  • 歯茎のマッサージができないタイプの電動歯ブラシで歯茎まで磨いてしまう。→歯茎を傷つけるリスクが高い。
  • 電動歯ブラシには専用の研磨剤が入っていない歯磨き粉を使う必要があることを知らず、手磨き用と同じ研磨剤入りのものを使っている。→歯の表面や歯ぐきを傷つけるリスクが高い。

上記の5名は軽く説明書を読んだうえで電動歯ブラシを使っています。このことからわかるのは、次のようなことです。

  • そもそものブラッシングの基本がわかっていないので、道具が変わっても応用できない。
  • 電動歯ブラシの特徴と、使い方を誤った際のデメリットが理解できてない。
  • 慣れた手磨きの際の習慣、思い込みが使い方に反映されてしまう。

電動歯ブラシは歯垢を取り除く力が強いだけに、間違った使い方をすると歯や歯茎を傷めてしまうリスクが高いため、患者さんには正しい使い方を知ってもらう必要があるのです。また、製品の特性によって「正しい使い方」もかなり違ってきますので、そういった意味でも普遍的な正しさというよりは、個々のケースに適した指導が重要になってきます。

質問が来た機会を、予防歯科開始のチャンスへ転換する

冒頭の電動歯ブラシの質問について、白黒はっきりと答えを知りたい患者さんへの回答として、「では、機会を設けて個別指導しましょうか?」というのはどうでしょうか。
「ブラッシング指導」として、電動歯ブラシでのブラッシング指導をします。すでに電動歯ブラシを使っている患者さんには、使っている機器を説明書と一緒に持ってきてもらい、正しい使い方をしているかを確認したうえ、指導します。染め出しをしたうえで、鏡を使わずにいつものように磨いてもらうと、その患者さんの歯磨きレベルが見事にわかります。また、磨いた後にいかに“磨けてないか”を患者さん自身に見せて知ってもらうことが、予防歯科に目覚める一番の早道になると思います。
電動歯ブラシを使っていない患者さんには、まずはその患者さんの口腔状況が電動歯ブラシを使うのに向いているのかどうかをアドバイスしてあげるのがよいでしょう。電動歯ブラシで磨くことでブラッシング効果が上がりそうであれば、個別指導のお勧めができそうです。もちろん、指導をするご自身が「電動歯ブラシをお勧めする派」であることが前提ですが(笑)。

電動歯ブラシはどんな説明を聞くよりも、「使ってみるのが一番」手っ取り早いのですが、換えの歯ブラシヘッドが高価な機種も多いので、歯科医院でその体験の機会を提供するのは難しいかもしれません。そんな場合は、模型を使ってのデモンストレーションがわかりやすいでしょう。電動歯ブラシの振動のインパクトを歯や歯茎で体感することはできませんが、指で触って擬似体験することは可能です。
また、こうした個別指導を治療の一環として行うのではなく、一つのイベントとして行う方法もあります。言い出せないだけで同じような質問をしたいと思っている患者さんは意外と多いかもしれません。来れない人にはイベントの様子を動画にして見てもらうのも有効です。

いずれにしても電動歯ブラシを使ってもらうことが目的ではなく、予防歯科についての正しい知識を身に着けて実践してもらうことを着地点として指導をすることが大切です。

  • その患者さんにとって正しいブラッシング指導をして、口腔内を健康に保つ方法を伝授、実践してもらう。
  • 電動歯ブラシを使ってさえ完璧に歯垢を落とすことはできない。だからこそ、定期的なメインテナンスを受ける必要があることを知ってもらう。
  • 電動歯ブラシでお金をかけて歯を磨くならば、その状態をキープするためのメインテナンスをしてこそ、その費用は生きて来ることを知ってもらう。

時間をかけられない場合は既存の資料を活用する

いかがでしたでしょうか。電動歯ブラシおすすめ派の先生の場合は、いろいろ展開の方法が浮かんでくるかもしれません。が、正直言ってブラッシング指導というのは患者さんへのサービス的な側面も大きく、ちょっとそこまでは手をかけていられないというのも現実かと思います。

そんな場合は、メーカーが出している動画などを案内するのもいいのではないでしょうか。もちろん自前でブラッシング指導のページや動画を作れればそれに越したことはありません。
【参考】ブラウン「上手な磨き方」動画

また、電動歯ブラシをおすすめしない派の先生にとって、手磨きがいいのか、電動がいいのかという質問への回答のヒントとして、歯磨きをお風呂の浴槽掃除に喩えてお話されている先生がいらっしゃいましたのでご紹介します。
湯垢がついた浴槽を磨くのに、手にスポンジをもって磨くか、電動スポンジ(?)で磨くか。確かに電動だと早いのかもしれませんが、たかだが5分の違いもないのであればどっちでもいいじゃないとも思えてきますよね。また、段差があったり内部に水が入りやすい繋ぎ目部分などは電動スポンジよりも手にスポンジを持って丁寧に洗ったほうがメリットが大きいかもしれません。
【参考】電動歯ブラシってどうなんですか? 

筆者自身も以前は電動歯ブラシ否定派だったんですが、あるとき電動歯ブラシをいただく機会があって使い出してみると、歯茎をマッサージしてくれている感じと、磨いたあとのツルツル感がくせになって、以来使い続けています。お風呂に浸かりながら歯磨きする時間がひとつの癒し時間になって習慣化してしまいました。
近ごろの電動歯ブラシはこうした歯茎のマッサージができるものも増えており、単なる歯磨き以上の体験、口腔の真の健康に貢献することへの期待も寄せられています。使い方次第、指導の仕方次第で患者さんのQOL向上にも役立つ可能性を秘めていそうです。