2015.09.18

  • マーケティング

予約時間を守らない人たちから医院を守る4つのポイント

昨今の歯科医院では、急患以外はすべて予約制というところが大半かと思います。そんな中で困りものなのが予約時間を守らない患者さんです。やむを得ない事情や、ごく稀にしかないケースは除き、問題は毎回遅れてくる、頻繁にすっぽかすといった人たち。よくあること、仕方がないと放置せず、こうした人たちを医師やスタッフ、時間通りに来られている他の患者さんに迷惑をかけるだけでなく、医院の経営をも脅かす存在として重く捉え、医院全体で対応することをお勧めします。今回はさまざまな医院が取り入れて効果のあった対応策をご紹介します。

予約時間についての医院の方針を決める

予約時間を守らない患者さんの対応を受付の采配に任せている医院もありますが、受付担当者の精神的な負担も大きく、利己的な患者さんを助長させるだけなのでお勧めできません。こうした患者さんへの対応は医院として方針を決め、誰が対応しても同じ受け答えになるようにします。

方針は医院の事情(これまでのやり方、院長の考え方、土地柄、患者さんのカラー)などを考慮して、それぞれにふさわしいものを決めます。
例えば、30分1枠の治療時間を設定しているとして、次のようなパターンが一例として考えられます。

  • 「15分以上遅れた場合は診れませんので、次回の予約の取り直しをお願いします」
  • 「治療は一人30分でお取りします。遅れた場合は、残り時間内での治療となりますので、15分以上遅れた場合は、ごく簡易な治療しかできませんのでご了承ください」
  • 「20分以上遅れた場合は、時間通りに来られている患者さんの後ろに回っていただきますので、1時間ほど待っていただく場合もあります」

もちろん、遅れてきた人に対して何も対策を講じないという選択もあるかと思いますが、そういった場合も、なぜそのようにするのか、医院としての方針をスタッフに伝えておくと、受付も仕事がしやすくなるでしょう。

実際に、患者さんの4割近くが60歳以上のお年寄りが占める歯科医院でWEB予約制を導入しようとして、導入時に大混乱をきたした実例もあります。この医院の場合は、15分を1枠として、1時間に1枠は予約なしの患者さんに対応する枠として空けて対応するようにしたそうです。

逆に患者さんのほとんどがお勤めの男女という医院は、完全予約制として、遅刻に対しては厳しく取り扱ったほうがかえって患者さん全体の利益につながる場合もあるでしょう。

それぞれの事情を加味したうえで、院長やスタッフがこれが自分の医院に「ふさわしい」と思える着地点にたどり着けるのが理想でしょう。もちろん同じ医院でも時代の流れで事情が変われば都度方針を見直していく必要があります。

悪質すぎるケースには治療拒否も辞さない覚悟で

上記で決めた予約時間についての方針を、初診の終了後、再診の予約の際にきっちりと患者さんに説明するようにします。院内や受付の見えやすい場所にも掲示しておきましょう。もちろん、ホームページでも予約する際の注意点として、しっかり患者さんが目を通すようにします。

あとは淡々と実行あるのみです。大抵の場合は、ほとんどの方がきちっと予約を守ってくれます。ところが、その例外の一部の人たちが、常習的であったり、悪質的な場合が多いので注意が必要です。
なかには、30分以上も遅れているのに、ひと言の声かけもなく診察券を受付に出して知らん顔を決め込む人や、毎回、受付時間に家を出る人、午前中の予約だったのに、午後になってから来る人なども……。

理解を超えてますね。こういう人たちには、感情ではなくシステムで対応します。
遅れてきてお詫びのひと言もない人には、診察を断るか、「予約が途切れるまで待っていただくことになりますが、よろしいですか?」と伝えて、実際に空き時間ができるまで待ってもらいます。
また、毎回予約時間に家を出てきっちり15分遅れてくる人には、最初から15分早めに予約時間を伝えておきます。
さらに、声を荒げたり、言う事を聞かない人には、院長かその代理者が毅然と対応します。どこまでも主張が平行線をたどるようであれば、「誠に残念ですが、当医院では貴方の治療を受けることができません」と治療を拒否するケースが出ても致し方ありません。

医師も人間ですから、医院に迷惑をかける患者さんに対していつもベストな治療が施せるとは限りません。システムによってこうした迷惑行為を防ぎ、ルールを守ってもらうことは引いてはご本人のためにもなるのだと考えましょう。

システムを平和的に維持するための工夫を凝らす

一度決めた方針は医院全体で守ります。また、その方針を守れるような工夫も必要です。

予約時間に来た患者を待たせない

たとえば、患者さんに時間厳守をお願いするならば、医院側も予約時間に治療を開始できるようにすべきです。不測の事態が起きて治療が長引く場合は、次の予約の人を待たせるのではなく、治療中の患者さんに不測の事態が起きた事情を話し、少し時間がかかっても大丈夫か確認し、了承をもらうようにします。
また、複数の医師がいて、治療が延びがちになる人がいる場合は、院長が時間厳守を指導するようにします。
受付時間、治療時間が守られているかは、全員が共有するシステムを作っておくのがよいでしょう。
時間厳守を基本としながらも、TPOで対応する余地を残しておくことは大切なことです。

予約確認の電話を事前に入れる

予約と予約のスパンが長い場合は、予約の前々日ぐらいに確認の電話を入れるのもよい方法です。なかにはすっかり忘れて別の予定を入れてしまっている人もいるので、そういう場合は次のアポイントをその場で取り直します。同じようにキャンセルが出た日の穴を、そういう人で埋めるとよいでしょう。
患者さん全員に対しては難しいので、自費治療の患者さんだけに行っているという医院もあります。

電話のほうが効果的ですが、予約を入れたら自動的に決まった日に予約確認メールが配信されるシステムもありますので活用を検討してもいいですね。

予約時間に来ない人には終了10分前くらいに電話を入れる

予約時間が過ぎても来ない人には、終了10分前くらいに電話を入れます。「お時間になっても来られないので、心配でご連絡しました」と言うとよいでしょう。その際に、次の予約を取ります。
患者さんのなかには、予約をすっぽかしてしまったことをきっかけに治療途中でも来なくなってしまう人が少なからずいますので、できる限り次の予約を取っておきます。

もちろん、患者さんにこうした連絡をとってもよいかは、初診時に個別にお断りしておきます。

まとめ

いかがでしたでしょうか。予約を守らない人はどこにでもいますが、医院の努力次第で、そういう人たち自身に不利益が戻ってくるというシステムを構築し、ルールを守る他の患者さんやスタッフを、引いてはその人自身を守ることができます。

  1. 予約時間を守らない患者さんへの対応方針は医院全体で決め、常に同じ対応をするようにする。
  2. 方針を決める際には医院が抱えているさまざまな事情を加味して、うまく運営できる方法と着地点を決める。また変化に合わせて方針の見直しも定期的に行う。
  3. 常習的・悪質的なケースには感情的にならず、ルールをもって淡々と対応する。また度を越えている場合は治療を断る覚悟で臨む。
  4. 運営をスムーズにするための医院側の努力を欠かさない。具体的には「予約時間に来た患者を待たせない」「予約確認の電話を入れる」「当日キャンセルの患者には時間内に連絡をし、次の予約を取る」。